私と音楽とのつながり
私は幼少期からピアノを始め、小学校6年生の時に声楽と出会いました。
その頃から声楽で音楽大学へ行くことを心に決めており、思春期の進路の悩みもなく進んでいきました。
目標としていた音楽大学に入り、目の当たりにしたのは、大学を卒業した先の音楽の世界。
教師になるか、アルバイトや仕事をしながらオペラなどの舞台に立ち続ける先輩方。
19歳の時に出逢った歌の先生の声に憧れ、先生の求める「正しく発声すること」でオペラの舞台に立つことを目指し、卒業後もアルバイトをしつつ、2人目を出産するまでその先生のもとで、歌の勉強を続けていきました。
しかし、声を出すことに必死な私は、身体のこわばりをとることができず、考えれば考えるほど身体に力がはいっていきました。
その当時、付き合っていた主人に「なぜ、それほど辛そうにレッスンに通い、歌を歌うの?」と聞かれ、「辛くてもやり続けなければ、上達はしないの。」と答えた私。
できないことへの焦りに必死でもがけばもがくほど、自分の心も魂も硬くなり、歌う喜びを忘れていきました。
30代になり、2人目の子どもを出産し、育児に専念することを理由に歌から離れたことで、どこかホッとした気持ちになっている自分に、初めて私は「なぜ歌を歌うのか」と本気で問いました。
よく考えてみると、自分が好んで聞いていた音楽はオペラなどの曲ではなく、ヒーリング音楽のような優しい静かな音楽だったことに気がついたのです。
その時、『音楽は人を癒すことができる。私が歌う歌でも、癒しや人にエネルギーを与えることができるのではないか。』という想いが沸き上がりましたが、正しい発声もできない今の私にできるわけがない。と蓋をしたのです。
そこから、焦りと不安の中で、自分探しの旅が始まりました。
子育てに没頭し、充実していたものの、どこか暗いトンネルの中にいるような感覚でした。
自己啓発のセミナーにも参加し、「自分の使命とは何だと思いますか?あなたにとって生きがいはなんですか?」
そう問われるたびに「わからない…」という心の声。
それでも、わかっている気になりたくて、絞り出した自分の答えで自分を納得させる日々が2年以上続いていました。
セミナーのコンサルなどで、私の今までやってきたことをお話しすると決まって、「あなたは音楽を仕事にするといい。」と言われることが多く、それが仕事にならない現実と、歌いたい気持ちにならない自分自身に益々どうしたらいいのかわからなくなっていきました。
そしてとうとう、私の人生を変えるためには、何かを手放す必要がある。私に音楽が付きまとうのなら、音楽への執着を一度手放そう。
音楽がなくても生きていくことができるし、何か他に大切なものが現れるかもしれない。
そう思ったのです。
そして、私は持っていたオペラの楽譜やコンサートで着る衣装などをほとんど人に渡し、この先一年間の間に音楽に通じることがなければ、私の人生から音楽の縁をすっぱり切ろう。
そう、心に誓いました。